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子どもたちへ 本を届けよう

西日本から 子どもたちへ本を届けよう ネットワーク

シリーズなの?続きがよみたい!

何年か前に、スーザン・プライス『ゴースト・ドラム』にしびれてしまった息子。

ゴースト・ドラム―北の魔法の物語 (Best choice)ゴースト・ドラム―北の魔法の物語 (Best choice)
(1991/05/15)
スーザン・プライス

商品詳細を見る


すごいねん……全部のお話が一つになるねん……と、熱にうかされたようにしゃべっていました。

そして、しばらくしたら、『ゴースト・ドラム』みたいな本、ほかにないの?と聞いてきたのですが……。

すべての物語がつながっていき、終わりがない……といえば、もう、これしかないでしょう……そろそろ、読めるかもしれないな……というわけで、とうとう、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』をすすめたところ……。


はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)
(1982/06/07)
ミヒャエル・エンデ

商品詳細を見る


即座に魅力に気がつき、すっかり、どっぷり、はまってしまった息子。

ミヒャエル・エンデは天才や~!!!

その後、またしても、もっとこういうお話ないの?攻撃にあい、それでは、「ラルフ・イーザウ」で検索してみなさいと助け舟を。

ところが、うまく見つけられなかった……というので、結局、作家、作品名をすべてリストアップした紙を渡すと……。
えっ?これ、どういうこと?『はてしない物語』の続きがあるん???と目が点に……。

そして、もちろんのこと、翌日には、早速、図書館に足を運び、しっかり見つけて借りてきましたとも!


ファンタージエン 秘密の図書館ファンタージエン 秘密の図書館
(2005/09/29)
ラルフ・イーザウ

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ファンタージエン 愚者の王ファンタージエン 愚者の王
(2006/03/08)
ターニャ・キンケル

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そして、息子は、「お母さん、これは、さすがに自分では見つけられんかったわ~」と、しみじみ。

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を愛する作家たちが、『はてしない物語』の「ファンタージェン」という異世界を舞台に、自分のファンタジーを紡いだ競作シリーズ「ファンタージェン」。
一冊ごとに作者が異なります。

図書館では、作者の名前順、対象年齢ごと、など、各種のルールにのっとって整理されるため、関連書なのに、置き場所が離れてしまい、気づかれない……ということが起こってしまいます。

そんなわけで、息子には、見つけることができなかったわけですが、考えてみれば、こういう本ってけっこうたくさんあるのです。

先日、図書ボラ仲間の方とスーパーで出会って立ち話をしたときにも、「へ~、そんなことあるの?」って驚かれたので、図書館で、本を探すときには、重要なポイントなのに、案外知られていないのかも……?

というわけで、このブログを書いています。

例えば、わたしが子どもの頃に持っていた本には、ヨハンナ・シュピーリの『ハイジ』の続編、シャルル・トリッテンの『それからのハイジ』、『ハイジの子どもたち』がありました。


ハイジ (福音館古典童話シリーズ (13))ハイジ (福音館古典童話シリーズ (13))
(1974/12/10)
J・シュピーリ

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それからのハイジそれからのハイジ
(2003/07/01)
シャルル・トリッテン

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ハイジはペーターと結婚し、子どもも生まれて幸せな家庭を築きます。「ハイジ」が好きな人には、期待通りの続きですよね。

これも、少し古いですが……。

ロバート・C・オブライエン『フリスビーおばさんとニムの家ねずみ』というニューベリー賞受賞作品があるのですが、これには、オブライエンが残した遺稿を、娘のジェイン・レズリー・コーンリーが完成させた『ラクソーとニムの家ねずみ』という続編があります。

これなんぞ、続きがあるなどと露知らぬまま、一冊だけ読んだという人がけっこういるのでは……?


フリスビーおばさんとニムの家ねずみフリスビーおばさんとニムの家ねずみ
(1974/06/20)
ロバート C.オブライエン

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ラクソーとニムの家ねずみラクソーとニムの家ねずみ
(1994/10/13)
ジェイン・レズリー・コンリー

商品詳細を見る


「ニム」=国立保健医学研究所<NIMH>。
本の雰囲気や、イラストのイメージからは想像しにくいですが、「ニムの家ネズミ」とは、なんと、動物実験の結果、驚異的な知能をもつにいたったネズミたち。

ただかわいらしい動物物語とはちがい、人間の現代文明への批判や、現在のエコロジー思想にもつながるSF小説です。面白くて、読み始めたらとまりません。

こんな風に、よくできた世界観の作品が、別の人の手で書き継がれていったり、優れた作品のまわりに、その影響を受けて生まれた作品群が存在したり……ということは決して珍しいことではありません。

図書館では、隣り合って並ぶことなく、ひっそりと、存在している関連書や、続きの物語。

だからこそ、探す喜び、見つけたときの感動は大きいですよ。

図書館へ足を運ぶ機会が増える夏休み。

図書館でゆっくり本を探してみては?


関連記事

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宇宙のみなしご 森絵都

『宇宙のみなしご』 森絵都 講談社(1994)

ずいぶん前に執筆したものですが……。『掘りだしものカタログ2 子どもの部屋×小説』藤本恵編著より記事を転載します。(句読点、改行を増やして読みやすくしています。)


宇宙のみなしご宇宙のみなしご
(1994/11/10)
森 絵都、杉田 比呂美 他

商品詳細を見る


中二の夏休み明け。
学校へ行ったら担任が変わっていた……そしてなんとなく始まった陽子の不登校。

せっかちな陽子とおっとりしたリン。
仲良く支えあってきた姉弟の、唯一の生きる知恵は、退屈に負けないこと。

ある夜、またもや陽子はひらめいてしまった。学校がつまらなくても、「わたしには屋根がある」。

陽子はあっけなく登校を再開し、姉弟は、夜な夜な「人んちの屋根」にのぼる。
それは二人のとっておきの秘密の遊びだった。

ところで、クラス一おとなしい七瀬さんは陽子に憧れ、クラス一なさけないやつキオスクは陽子を同志と信じ込んでいる。

この厄介なクラスメイト二人が「遊び」に加わって、ただの遊びは新たな意味を持ち始め、事態は意外な方向へ……。

寒さが身にしみる、真冬の真夜中……。最後の「屋根のぼり」決行の時がきた。

屋根の上で、ひとつの毛布にくるまった四人は、宇宙の暗闇を仰いだ。

……つないだ手のひらに互いのぬくもりが伝わってくる。


・・・・・・・・*・・・・・・・・・・・*・・・・・*・・・・・・・・・・*・・・

パンチのきいた比喩とスピード感みなぎる小気味よい文章。

自立心と孤独。脆くも強烈な自意識。やむにやまれぬ衝動などなど……、十代のリアルに寄り添いながら、

「屋根のぼり」でひらかれるファンタスティックな世界、その爽やかな夜の空気と解放感につつんで、

生きていくための壁の乗り越え方、手のつなぎ方を提示した、作者森絵都の原点ともいえる作品。

・・・・・・・・*・・・・・・・・・・・*・・・・・*・・・・・・・・・・*・・・

単行本のほかに、大人向け文庫
宇宙のみなしご (角川文庫)
子ども向け文庫
宇宙のみなしご (フォア文庫)もあります。


子どもの部屋×小説―掘りだしものカタログ〈3〉 (掘りだしものカタログ 3)には、よりすぐりの児童文学がコンパクトに紹介されています。(わたしは3作品の記事を担当しています。)
夏休みの読書のお供にいかがでしょうか。


関連記事→プロフィール My Works
関連記事→読書会②ブックトーク(中学生)



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怪物はささやく

英語原書のメール読書会では、今、これを読んでいます。


A Monster Calls: Inspired by an idea from Siobhan DowdA Monster Calls: Inspired by an idea from Siobhan Dowd
(2011/09/15)
Patrick Ness

商品詳細を見る


「ボグ・チャイルド」のシヴォーン・ダウドが残した原案を元に、パトリック・ネスが作品化。
二人とも、評価の高い作家同士。タッグを組んだこの作品も、当然、質の高さは折り紙つき。

……というわけで、読み応えも十分……です。がんばります。

ところで、映画の予告編ならぬ、本の予告編があるんですね。

この“A Monster Calls"の宣伝がいいんですよ~。

哀愁を帯びた音楽にのせて……、表紙をそのままアニメーションにしたような、シルエット(影絵)だけの詩的な映像。美しいです。





ね、読んでみたくなりませんか?

邦訳がすでに出ていますので、読んでみたい方は、↓をどうぞ。


怪物はささやく怪物はささやく
(2011/11/07)
パトリック・ネス

商品詳細を見る



ついでに、シヴォーン・ダウドの「ボグ・チャイルド」も。この作品については、そのうち、もう少し詳しくご紹介したいと思っていますが……どうなることやら。


ボグ・チャイルドボグ・チャイルド
(2011/01)
シヴォーン ダウド

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読書会②ブックトーク(中学生)

7月の読書会は、第一部課題図書、第二部ブックトークと充実していました。

第二部ブックトーク(中学生むけ)

司書さんが中学校で披露するために、内容、選書について、練りに練っている最中のプログラムを練習も兼ねて……ということで、とても楽しい時間でした。

テーマは「せなか」。
うーん、なかなか難しいテーマです。
背中から、背骨、背く……と連想が広がり、面白い展開でした。詳細は、そこはそれ、ばらさないでおきましょう……。

わたしならどんな展開を考えるかな?と興味をそそられるテーマでした。テーマを聞いただけで、どんな本が出てくるのかな?と聞き手の心をつかめそうです。

とりあげられた本の中からいくつか私もおすすめの本を……。

いわずと知れた……?
ミヒャエル・エンデ「モモ」(岩波書店)。

中学生のときに初めて出会い、ほぼ大学生の終わりまで、ずーっとエンデ作品にはまったまま通り抜けました。
そして、最近、息子が、「はてしない物語」にノックアウトされました。

かつては、あまりファンタジーが翻訳されてなかったので、読書が好きで、とにかく長いファンタジーが読みたい、読み終えたくない……という子どもには、ぴったりだったんですよね。

ハリポタブーム、指輪、ナルニアの映画化……を経て、長いファンタジーがばんばん翻訳された今からは想像できない……かもしれませんね。

「モモ」は、エンデ作品のなかで、もっとも完成度が高く、細部に至るまで見事に構築された建築のようなファンタジーです。

円形劇場を舞台に、道路掃除婦、カメ、灰色の男たちなどなど、明快なイメージでくっきりと描き出される登場人物たち。
時間とは何かという哲学的なテーマを、詩的イメージで余すところなく表現して、その美しさには、何度読んでも圧倒されます。


モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)
(1976/09/24)
ミヒャエル・エンデ

商品詳細を見る



ブックトークや、小学校の朝読で、私も時々紹介する「あたまにつまった石ころが」。

今回、初めて、人に読んでもらっていて、気づいたのですが、原題は"Rocks in his head"。

いやぁ、翻訳タイトルの魅力的なこと。
いい本だなと思ったら、あら、これも、あらこれも……ということがあって、千葉茂樹さん訳の本にはハズレがない!と思っていましたが、やはり、うまい!!とあらためて。
実在の人物、実話を元にした素敵な絵本です。


あたまにつまった石ころがあたまにつまった石ころが
(2002/08)
キャロル・オーティス ハースト

商品詳細を見る


こちらも千葉茂樹さん訳です。

ひねり屋ひねり屋
(1999/09)
ジェリー スピネッリ

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宇宙のみなしご宇宙のみなしご
(1994/11/10)
森 絵都、杉田 比呂美 他

商品詳細を見る

この作品については、紹介文を書いたことがあります。そんなこともあって、森絵都さんの初期の作品の中では『宇宙のみなしご』が一番好きです。


イグアナくんのおじゃまな毎日 (軽装版偕成社ポッシュ)イグアナくんのおじゃまな毎日 (軽装版偕成社ポッシュ)
(2007/11)
佐藤 多佳子

商品詳細を見る


デビューされたばかりの頃、うわぁ、児童文学にも、こんな作家さんが出てきたんだ~!とうれしくなったのを覚えています。このあたりの本が出たのは、わたしがまだ大学院生の頃のこと……。

森絵都さん、佐藤多佳子さんの現在の活躍ぶりはご紹介するまでもありませんよね。

とまぁ、こんな本たち。
さて、「せなか」とどういうつながりが・・・・・・? 読んで考えてみるのも一興かも?

みんなで、感想や意見を言い合いながら堪能しました!


関連記事→『宇宙のみなしご』 森絵都





関連記事

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夏季セミナーのお知らせ

第44回 2013 子どもの文化 夏季セミナー IN KYOTO


★8月2日(金) 会場 キャンパスプラザ京都
記念講演  
「育ち合う保育」子ども-大人が双方向に育ち・学び合う 
-新しい時代の要請に応えて-

片岡輝(子どもの文化研究所所長・東京家政大学元学長)


★8月3日(土) 午前10時~午後4時 会場 ルビノ京都堀川
分科会1
保育の計画と評価-PDCAサイクルを考える- 師岡章(白梅学園大学教授)

分科会2
3歳未満児の発達と保育-遊びで育つ"自分らしさ"と"豊かな学びの芽"を-  
今井和子(元立教女学院短期大学・質の高い乳児保育をめざす実践研究会代表)

分科会3
わらべうた・あそびうたで遊ぶ 藤田浩子(語り手・わらべうた実践家)

分科会4
気になる親と子、困っている子の現状と支援 橋場隆(発達臨床心理士・スーパーバイザー)

分科会5
フェルト人形「動物の立つぬいぐるみ」を作る
田中周子(子どもの生活アドバイザー・「婦人乃友」全国友の会講師)


≪京都セミナー≫
●記念講演
8月2日(金) 午後1時半~3時半  会場 キャンパスプラザ京都

●分科会
8月3日(土) 午前10時~午後4時 会場 ルビノ京都堀川


・受講料 8,000円
・宿泊費 7,700円
・定員  350人
・締切  7月31日(定員になり次第締め切り)

・主催 財団法人 文民教育協会 子どもの文化研究所

詳しくはこちらご覧ください。→ 子どもの文化 夏季セミナー 京都セミナー


 
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子どもたちへ 本を届けよう 子どもたちへ 本を届けよう 2013年07月

子どもたちへ 本を届けよう

西日本から 子どもたちへ本を届けよう ネットワーク

シリーズなの?続きがよみたい!

何年か前に、スーザン・プライス『ゴースト・ドラム』にしびれてしまった息子。

ゴースト・ドラム―北の魔法の物語 (Best choice)ゴースト・ドラム―北の魔法の物語 (Best choice)
(1991/05/15)
スーザン・プライス

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すごいねん……全部のお話が一つになるねん……と、熱にうかされたようにしゃべっていました。

そして、しばらくしたら、『ゴースト・ドラム』みたいな本、ほかにないの?と聞いてきたのですが……。

すべての物語がつながっていき、終わりがない……といえば、もう、これしかないでしょう……そろそろ、読めるかもしれないな……というわけで、とうとう、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』をすすめたところ……。


はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)
(1982/06/07)
ミヒャエル・エンデ

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即座に魅力に気がつき、すっかり、どっぷり、はまってしまった息子。

ミヒャエル・エンデは天才や~!!!

その後、またしても、もっとこういうお話ないの?攻撃にあい、それでは、「ラルフ・イーザウ」で検索してみなさいと助け舟を。

ところが、うまく見つけられなかった……というので、結局、作家、作品名をすべてリストアップした紙を渡すと……。
えっ?これ、どういうこと?『はてしない物語』の続きがあるん???と目が点に……。

そして、もちろんのこと、翌日には、早速、図書館に足を運び、しっかり見つけて借りてきましたとも!


ファンタージエン 秘密の図書館ファンタージエン 秘密の図書館
(2005/09/29)
ラルフ・イーザウ

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ファンタージエン 愚者の王ファンタージエン 愚者の王
(2006/03/08)
ターニャ・キンケル

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そして、息子は、「お母さん、これは、さすがに自分では見つけられんかったわ~」と、しみじみ。

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を愛する作家たちが、『はてしない物語』の「ファンタージェン」という異世界を舞台に、自分のファンタジーを紡いだ競作シリーズ「ファンタージェン」。
一冊ごとに作者が異なります。

図書館では、作者の名前順、対象年齢ごと、など、各種のルールにのっとって整理されるため、関連書なのに、置き場所が離れてしまい、気づかれない……ということが起こってしまいます。

そんなわけで、息子には、見つけることができなかったわけですが、考えてみれば、こういう本ってけっこうたくさんあるのです。

先日、図書ボラ仲間の方とスーパーで出会って立ち話をしたときにも、「へ~、そんなことあるの?」って驚かれたので、図書館で、本を探すときには、重要なポイントなのに、案外知られていないのかも……?

というわけで、このブログを書いています。

例えば、わたしが子どもの頃に持っていた本には、ヨハンナ・シュピーリの『ハイジ』の続編、シャルル・トリッテンの『それからのハイジ』、『ハイジの子どもたち』がありました。


ハイジ (福音館古典童話シリーズ (13))ハイジ (福音館古典童話シリーズ (13))
(1974/12/10)
J・シュピーリ

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それからのハイジそれからのハイジ
(2003/07/01)
シャルル・トリッテン

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ハイジはペーターと結婚し、子どもも生まれて幸せな家庭を築きます。「ハイジ」が好きな人には、期待通りの続きですよね。

これも、少し古いですが……。

ロバート・C・オブライエン『フリスビーおばさんとニムの家ねずみ』というニューベリー賞受賞作品があるのですが、これには、オブライエンが残した遺稿を、娘のジェイン・レズリー・コーンリーが完成させた『ラクソーとニムの家ねずみ』という続編があります。

これなんぞ、続きがあるなどと露知らぬまま、一冊だけ読んだという人がけっこういるのでは……?


フリスビーおばさんとニムの家ねずみフリスビーおばさんとニムの家ねずみ
(1974/06/20)
ロバート C.オブライエン

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ラクソーとニムの家ねずみラクソーとニムの家ねずみ
(1994/10/13)
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「ニム」=国立保健医学研究所<NIMH>。
本の雰囲気や、イラストのイメージからは想像しにくいですが、「ニムの家ネズミ」とは、なんと、動物実験の結果、驚異的な知能をもつにいたったネズミたち。

ただかわいらしい動物物語とはちがい、人間の現代文明への批判や、現在のエコロジー思想にもつながるSF小説です。面白くて、読み始めたらとまりません。

こんな風に、よくできた世界観の作品が、別の人の手で書き継がれていったり、優れた作品のまわりに、その影響を受けて生まれた作品群が存在したり……ということは決して珍しいことではありません。

図書館では、隣り合って並ぶことなく、ひっそりと、存在している関連書や、続きの物語。

だからこそ、探す喜び、見つけたときの感動は大きいですよ。

図書館へ足を運ぶ機会が増える夏休み。

図書館でゆっくり本を探してみては?


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宇宙のみなしご 森絵都

『宇宙のみなしご』 森絵都 講談社(1994)

ずいぶん前に執筆したものですが……。『掘りだしものカタログ2 子どもの部屋×小説』藤本恵編著より記事を転載します。(句読点、改行を増やして読みやすくしています。)


宇宙のみなしご宇宙のみなしご
(1994/11/10)
森 絵都、杉田 比呂美 他

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中二の夏休み明け。
学校へ行ったら担任が変わっていた……そしてなんとなく始まった陽子の不登校。

せっかちな陽子とおっとりしたリン。
仲良く支えあってきた姉弟の、唯一の生きる知恵は、退屈に負けないこと。

ある夜、またもや陽子はひらめいてしまった。学校がつまらなくても、「わたしには屋根がある」。

陽子はあっけなく登校を再開し、姉弟は、夜な夜な「人んちの屋根」にのぼる。
それは二人のとっておきの秘密の遊びだった。

ところで、クラス一おとなしい七瀬さんは陽子に憧れ、クラス一なさけないやつキオスクは陽子を同志と信じ込んでいる。

この厄介なクラスメイト二人が「遊び」に加わって、ただの遊びは新たな意味を持ち始め、事態は意外な方向へ……。

寒さが身にしみる、真冬の真夜中……。最後の「屋根のぼり」決行の時がきた。

屋根の上で、ひとつの毛布にくるまった四人は、宇宙の暗闇を仰いだ。

……つないだ手のひらに互いのぬくもりが伝わってくる。


・・・・・・・・*・・・・・・・・・・・*・・・・・*・・・・・・・・・・*・・・

パンチのきいた比喩とスピード感みなぎる小気味よい文章。

自立心と孤独。脆くも強烈な自意識。やむにやまれぬ衝動などなど……、十代のリアルに寄り添いながら、

「屋根のぼり」でひらかれるファンタスティックな世界、その爽やかな夜の空気と解放感につつんで、

生きていくための壁の乗り越え方、手のつなぎ方を提示した、作者森絵都の原点ともいえる作品。

・・・・・・・・*・・・・・・・・・・・*・・・・・*・・・・・・・・・・*・・・

単行本のほかに、大人向け文庫
宇宙のみなしご (角川文庫)
子ども向け文庫
宇宙のみなしご (フォア文庫)もあります。


子どもの部屋×小説―掘りだしものカタログ〈3〉 (掘りだしものカタログ 3)には、よりすぐりの児童文学がコンパクトに紹介されています。(わたしは3作品の記事を担当しています。)
夏休みの読書のお供にいかがでしょうか。


関連記事→プロフィール My Works
関連記事→読書会②ブックトーク(中学生)



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怪物はささやく

英語原書のメール読書会では、今、これを読んでいます。


A Monster Calls: Inspired by an idea from Siobhan DowdA Monster Calls: Inspired by an idea from Siobhan Dowd
(2011/09/15)
Patrick Ness

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「ボグ・チャイルド」のシヴォーン・ダウドが残した原案を元に、パトリック・ネスが作品化。
二人とも、評価の高い作家同士。タッグを組んだこの作品も、当然、質の高さは折り紙つき。

……というわけで、読み応えも十分……です。がんばります。

ところで、映画の予告編ならぬ、本の予告編があるんですね。

この“A Monster Calls"の宣伝がいいんですよ~。

哀愁を帯びた音楽にのせて……、表紙をそのままアニメーションにしたような、シルエット(影絵)だけの詩的な映像。美しいです。





ね、読んでみたくなりませんか?

邦訳がすでに出ていますので、読んでみたい方は、↓をどうぞ。


怪物はささやく怪物はささやく
(2011/11/07)
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ついでに、シヴォーン・ダウドの「ボグ・チャイルド」も。この作品については、そのうち、もう少し詳しくご紹介したいと思っていますが……どうなることやら。


ボグ・チャイルドボグ・チャイルド
(2011/01)
シヴォーン ダウド

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読書会②ブックトーク(中学生)

7月の読書会は、第一部課題図書、第二部ブックトークと充実していました。

第二部ブックトーク(中学生むけ)

司書さんが中学校で披露するために、内容、選書について、練りに練っている最中のプログラムを練習も兼ねて……ということで、とても楽しい時間でした。

テーマは「せなか」。
うーん、なかなか難しいテーマです。
背中から、背骨、背く……と連想が広がり、面白い展開でした。詳細は、そこはそれ、ばらさないでおきましょう……。

わたしならどんな展開を考えるかな?と興味をそそられるテーマでした。テーマを聞いただけで、どんな本が出てくるのかな?と聞き手の心をつかめそうです。

とりあげられた本の中からいくつか私もおすすめの本を……。

いわずと知れた……?
ミヒャエル・エンデ「モモ」(岩波書店)。

中学生のときに初めて出会い、ほぼ大学生の終わりまで、ずーっとエンデ作品にはまったまま通り抜けました。
そして、最近、息子が、「はてしない物語」にノックアウトされました。

かつては、あまりファンタジーが翻訳されてなかったので、読書が好きで、とにかく長いファンタジーが読みたい、読み終えたくない……という子どもには、ぴったりだったんですよね。

ハリポタブーム、指輪、ナルニアの映画化……を経て、長いファンタジーがばんばん翻訳された今からは想像できない……かもしれませんね。

「モモ」は、エンデ作品のなかで、もっとも完成度が高く、細部に至るまで見事に構築された建築のようなファンタジーです。

円形劇場を舞台に、道路掃除婦、カメ、灰色の男たちなどなど、明快なイメージでくっきりと描き出される登場人物たち。
時間とは何かという哲学的なテーマを、詩的イメージで余すところなく表現して、その美しさには、何度読んでも圧倒されます。


モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)
(1976/09/24)
ミヒャエル・エンデ

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ブックトークや、小学校の朝読で、私も時々紹介する「あたまにつまった石ころが」。

今回、初めて、人に読んでもらっていて、気づいたのですが、原題は"Rocks in his head"。

いやぁ、翻訳タイトルの魅力的なこと。
いい本だなと思ったら、あら、これも、あらこれも……ということがあって、千葉茂樹さん訳の本にはハズレがない!と思っていましたが、やはり、うまい!!とあらためて。
実在の人物、実話を元にした素敵な絵本です。


あたまにつまった石ころがあたまにつまった石ころが
(2002/08)
キャロル・オーティス ハースト

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こちらも千葉茂樹さん訳です。

ひねり屋ひねり屋
(1999/09)
ジェリー スピネッリ

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宇宙のみなしご宇宙のみなしご
(1994/11/10)
森 絵都、杉田 比呂美 他

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この作品については、紹介文を書いたことがあります。そんなこともあって、森絵都さんの初期の作品の中では『宇宙のみなしご』が一番好きです。


イグアナくんのおじゃまな毎日 (軽装版偕成社ポッシュ)イグアナくんのおじゃまな毎日 (軽装版偕成社ポッシュ)
(2007/11)
佐藤 多佳子

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デビューされたばかりの頃、うわぁ、児童文学にも、こんな作家さんが出てきたんだ~!とうれしくなったのを覚えています。このあたりの本が出たのは、わたしがまだ大学院生の頃のこと……。

森絵都さん、佐藤多佳子さんの現在の活躍ぶりはご紹介するまでもありませんよね。

とまぁ、こんな本たち。
さて、「せなか」とどういうつながりが・・・・・・? 読んで考えてみるのも一興かも?

みんなで、感想や意見を言い合いながら堪能しました!


関連記事→『宇宙のみなしご』 森絵都





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夏季セミナーのお知らせ

第44回 2013 子どもの文化 夏季セミナー IN KYOTO


★8月2日(金) 会場 キャンパスプラザ京都
記念講演  
「育ち合う保育」子ども-大人が双方向に育ち・学び合う 
-新しい時代の要請に応えて-

片岡輝(子どもの文化研究所所長・東京家政大学元学長)


★8月3日(土) 午前10時~午後4時 会場 ルビノ京都堀川
分科会1
保育の計画と評価-PDCAサイクルを考える- 師岡章(白梅学園大学教授)

分科会2
3歳未満児の発達と保育-遊びで育つ"自分らしさ"と"豊かな学びの芽"を-  
今井和子(元立教女学院短期大学・質の高い乳児保育をめざす実践研究会代表)

分科会3
わらべうた・あそびうたで遊ぶ 藤田浩子(語り手・わらべうた実践家)

分科会4
気になる親と子、困っている子の現状と支援 橋場隆(発達臨床心理士・スーパーバイザー)

分科会5
フェルト人形「動物の立つぬいぐるみ」を作る
田中周子(子どもの生活アドバイザー・「婦人乃友」全国友の会講師)


≪京都セミナー≫
●記念講演
8月2日(金) 午後1時半~3時半  会場 キャンパスプラザ京都

●分科会
8月3日(土) 午前10時~午後4時 会場 ルビノ京都堀川


・受講料 8,000円
・宿泊費 7,700円
・定員  350人
・締切  7月31日(定員になり次第締め切り)

・主催 財団法人 文民教育協会 子どもの文化研究所

詳しくはこちらご覧ください。→ 子どもの文化 夏季セミナー 京都セミナー


 
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