fc2ブログ

子どもたちへ 本を届けよう

西日本から 子どもたちへ本を届けよう ネットワーク

読書会のご案内

大阪樟蔭女子大学児童教育学科神村研究室では、月に一回程度、子どもの本や絵本の読書会をひらいています。
これまでに様々な本を読みました。
「読書会まとめ」のカテゴリに少しずつこれまでの読書会のことを書いています。

今年、最初の読書会は2月に行います。
「ボグ・チャイルド」、「ウィッシュ・リスト」と、アイルランドの作家のYAを読みました。
その流れで、次はこの本を取り上げたいと思います。



『目覚めの森の美女 森と水の14の物語 』
ディアドラ・サリヴァン、田中 亜希子訳(東京創元社、2019)

よく知られた昔話を現代的に解釈した物語集。
アイルランドで、いくつかの賞を受賞した注目の作品です。

昔話の再話系といえば、ドナ・ジョー・ナポリの作品などが想起されます。
読み比べてみるのも一興。

下敷きにされている物語があると、その解釈について、好みも分かれるし、いろいろな意見も言いやすいので、読書会には好都合です。
どんな話題が広がるか楽しみです。

ところで、この読書会、昨年10年目となり、今年の4月で10周年を迎えることとなりました。
そんなわけで、これまでの歩みをふりかえり、何かみんなの記念になることができればいいなと考えています。

それでは、今年もよろしくお願いいたします。


PageTop

読書会⑦2016年

研究室で開催している読書会が、気づいてみたら、思いのほか長く続いていました。
そこで、2016年の1月から、少しずつ、まとめ記事を書き始めました。
だんだん現在に近づいてきて、あと少しです。毎年、その都度、書いておけばよかったのになぁ……と反省しつつ。

2016年 (平成28年) 7年目

5月
●R.J.パラシオ作『ワンダー』(ほるぷ出版、2015)
 →関連記事「ワンダー(Wonder)」を読んで聴いて。」

6月
●サリー・ガードナー作『火打ち箱』(東京創元社、2015)

7月 休会
8月
●サリー・ガードナー作『火打ち箱』(東京創元社、2015)
●アンデルセン「火打ち箱」

9月 休会
10月
●バージニア・リー・バートンの絵本 ~ 知っているつもりの古典絵本~

11月 休会
12月
●額賀澪(ぬかが みお)
『屋上のウインドノーツ』(2015年6月、文藝春秋)(第22回松本清張賞「ウインドノーツ」改題)
『ヒトリコ』 (2015年6月、小学館)第16回小学館文庫小説賞

1月 新年会
2月
●森絵都『クラスメイツ』(偕成社、2014)




関屋キャンパスからの通算7年目、小阪キャンパスに移転、再開して二年目。

この年は、鉄板の古典、バージニア・リー・バートンの絵本をはさんで、比較的新しく、生きのよいYAが並びました。
参加者の意識や好み、仕事上のアップデートの必要が反映されています。

また、YAの翻訳出版の活性化、子どもに読みやすく、新しい本への要求、期待の高まりが、背景にあります。

古めかしい本にはなかなか子どもの手がのびないということが以前よりも認知されてきました。
学校司書も増えてきて、今、目の前にいる子ども、そしてこれからの多様化する社会を生きていく子どもに、どんな本をすすめればいいのかが問われていることを感じます。

特に、非常に話題を呼んでいた『ワンダー』、そして、デビューしたばかりで受賞ラッシュだった額賀澪と、久々にYAに戻ってきた森絵都の読み比べは、とても新鮮で刺激の多い読書となりました。

『ワンダー』は、先天性の染色体異常により、顔に顕著な骨形成不全などがあらわれるトリーチャー・コリンズ症候群の少年オーガストが主人公です。
身体障碍者は、子どもの本にも比較的よく取り上げられますし、心理面の問題を抱える主人公もYAには珍しくありません。
また、精神障碍者が、社会の様々な場面で不可視化されていることは、以前から各方面で指摘されています。
自分を醜いと思い込んでしまう心理的な問題、あるいは、傷や痣などの見た目をケアするカバーメイク、ケアメイクの存在などは知っていましたし、それなりに関心を寄せていました。
しかし、私自身の不明を恥じなければなりませんが、この作品に出会うまで、トリーチャー・コリンズ症候群のような人を身近には知らず、これまで考慮してみたこともまったくありませんでした。

この作品は、いくつかのパートに分かれていて、そのパートごとに視点人物が移り変わっていきます。
その構成によって、センシティブな内容を取り扱いながら、突き放しすぎず、寄り添いすぎず、登場人物を誰一人としておろそかにしないで語ることに成功しています。
主人公のオーガストはもちろん、その家族、まわりの子どもたち、さらにそれをとりまく先生や親、といった登場人物について、心の機微、ささやかな行動の積み重ね、それらが波及して起こる反応や行動、出来事の連鎖が丁寧に描かれていきます。

オーガストをいじめる子どもも、単なる悪い子、主人公の敵という型にははめずに、背景にも筆を届かせて、その心のうちをきちんと想像させてくれます。
徐々にオーガストとうちとけていく子どもたち、親しくなっていく仲間についても、決して単なるいいやつとして描きません。

絡み合う人間模様、個々人の複雑な思い、心の揺らぎをとらえ、描かれていることのさらに外側を想像させることで、単なる勧善懲悪もの、感動ものとは一線を画しました。

パートが変わるたびに、別の視点を与えられるので、読者は、謎解き、答え合わせの面白さも味わいながら、多面的に、物語を構築していくことができます。
パートが切り替わる前後のつなぎ方、スイッチの仕方も見事でした。

登場人物との距離の取り方、視点の切り替えの妙でしょうか。
大変センシティブで深い内容ながら、さらさらと読めて、読後感はまったく重たくありません。
現実は厳しく、つらいこともたくさんあるけれど、泣いて笑って、あくまで爽やか。
あきらめないで、希望を捨てないで、生きていける、生きていこう。そんな風に背中をすこしおしてくれる、そんな本です。

この作品と、この作品を原作とした映画は、どちらも高く評価されました。
その社会に与えたインパクトは相当のものだったと思います。

こんな風に(↓)、耳目にふれる機会が増えたのも、この作品の影響では……と考えます。
「顔ニモマケズ、僕は生きる 内面好きと言ってくれた彼女」(朝日新聞デジタル)

新鮮で切実でひりひりするような作品は、確実に、子どもたちの心に響くはず。
そして、大人にも届きます。
優れた作品は、社会の変化を少し促すことができる、そんなYAの力を感じるこの頃です。

このときはたしか、学会の企画で森絵都さんのお話を聴く機会があり、『クラスメイツ』創作にまつわるエピソードなどもうかがいました。
お話の内容もとても興味深く、面白かったのですが、森絵都さんの人となり、たたずまい、丁寧に発せられる声や言葉にふれて、作品の背骨のようなものを感じられたことが印象的でした。




映画も原作をリスペクトした丁寧な作りで、素晴らしい作品でした。
パートごとにフォーカスする人物が移っていく構成が映画にも生きています。










PageTop
子どもたちへ 本を届けよう 子どもたちへ 本を届けよう 2020年01月

子どもたちへ 本を届けよう

西日本から 子どもたちへ本を届けよう ネットワーク

読書会のご案内

大阪樟蔭女子大学児童教育学科神村研究室では、月に一回程度、子どもの本や絵本の読書会をひらいています。
これまでに様々な本を読みました。
「読書会まとめ」のカテゴリに少しずつこれまでの読書会のことを書いています。

今年、最初の読書会は2月に行います。
「ボグ・チャイルド」、「ウィッシュ・リスト」と、アイルランドの作家のYAを読みました。
その流れで、次はこの本を取り上げたいと思います。



『目覚めの森の美女 森と水の14の物語 』
ディアドラ・サリヴァン、田中 亜希子訳(東京創元社、2019)

よく知られた昔話を現代的に解釈した物語集。
アイルランドで、いくつかの賞を受賞した注目の作品です。

昔話の再話系といえば、ドナ・ジョー・ナポリの作品などが想起されます。
読み比べてみるのも一興。

下敷きにされている物語があると、その解釈について、好みも分かれるし、いろいろな意見も言いやすいので、読書会には好都合です。
どんな話題が広がるか楽しみです。

ところで、この読書会、昨年10年目となり、今年の4月で10周年を迎えることとなりました。
そんなわけで、これまでの歩みをふりかえり、何かみんなの記念になることができればいいなと考えています。

それでは、今年もよろしくお願いいたします。


PageTop

読書会⑦2016年

研究室で開催している読書会が、気づいてみたら、思いのほか長く続いていました。
そこで、2016年の1月から、少しずつ、まとめ記事を書き始めました。
だんだん現在に近づいてきて、あと少しです。毎年、その都度、書いておけばよかったのになぁ……と反省しつつ。

2016年 (平成28年) 7年目

5月
●R.J.パラシオ作『ワンダー』(ほるぷ出版、2015)
 →関連記事「ワンダー(Wonder)」を読んで聴いて。」

6月
●サリー・ガードナー作『火打ち箱』(東京創元社、2015)

7月 休会
8月
●サリー・ガードナー作『火打ち箱』(東京創元社、2015)
●アンデルセン「火打ち箱」

9月 休会
10月
●バージニア・リー・バートンの絵本 ~ 知っているつもりの古典絵本~

11月 休会
12月
●額賀澪(ぬかが みお)
『屋上のウインドノーツ』(2015年6月、文藝春秋)(第22回松本清張賞「ウインドノーツ」改題)
『ヒトリコ』 (2015年6月、小学館)第16回小学館文庫小説賞

1月 新年会
2月
●森絵都『クラスメイツ』(偕成社、2014)




関屋キャンパスからの通算7年目、小阪キャンパスに移転、再開して二年目。

この年は、鉄板の古典、バージニア・リー・バートンの絵本をはさんで、比較的新しく、生きのよいYAが並びました。
参加者の意識や好み、仕事上のアップデートの必要が反映されています。

また、YAの翻訳出版の活性化、子どもに読みやすく、新しい本への要求、期待の高まりが、背景にあります。

古めかしい本にはなかなか子どもの手がのびないということが以前よりも認知されてきました。
学校司書も増えてきて、今、目の前にいる子ども、そしてこれからの多様化する社会を生きていく子どもに、どんな本をすすめればいいのかが問われていることを感じます。

特に、非常に話題を呼んでいた『ワンダー』、そして、デビューしたばかりで受賞ラッシュだった額賀澪と、久々にYAに戻ってきた森絵都の読み比べは、とても新鮮で刺激の多い読書となりました。

『ワンダー』は、先天性の染色体異常により、顔に顕著な骨形成不全などがあらわれるトリーチャー・コリンズ症候群の少年オーガストが主人公です。
身体障碍者は、子どもの本にも比較的よく取り上げられますし、心理面の問題を抱える主人公もYAには珍しくありません。
また、精神障碍者が、社会の様々な場面で不可視化されていることは、以前から各方面で指摘されています。
自分を醜いと思い込んでしまう心理的な問題、あるいは、傷や痣などの見た目をケアするカバーメイク、ケアメイクの存在などは知っていましたし、それなりに関心を寄せていました。
しかし、私自身の不明を恥じなければなりませんが、この作品に出会うまで、トリーチャー・コリンズ症候群のような人を身近には知らず、これまで考慮してみたこともまったくありませんでした。

この作品は、いくつかのパートに分かれていて、そのパートごとに視点人物が移り変わっていきます。
その構成によって、センシティブな内容を取り扱いながら、突き放しすぎず、寄り添いすぎず、登場人物を誰一人としておろそかにしないで語ることに成功しています。
主人公のオーガストはもちろん、その家族、まわりの子どもたち、さらにそれをとりまく先生や親、といった登場人物について、心の機微、ささやかな行動の積み重ね、それらが波及して起こる反応や行動、出来事の連鎖が丁寧に描かれていきます。

オーガストをいじめる子どもも、単なる悪い子、主人公の敵という型にははめずに、背景にも筆を届かせて、その心のうちをきちんと想像させてくれます。
徐々にオーガストとうちとけていく子どもたち、親しくなっていく仲間についても、決して単なるいいやつとして描きません。

絡み合う人間模様、個々人の複雑な思い、心の揺らぎをとらえ、描かれていることのさらに外側を想像させることで、単なる勧善懲悪もの、感動ものとは一線を画しました。

パートが変わるたびに、別の視点を与えられるので、読者は、謎解き、答え合わせの面白さも味わいながら、多面的に、物語を構築していくことができます。
パートが切り替わる前後のつなぎ方、スイッチの仕方も見事でした。

登場人物との距離の取り方、視点の切り替えの妙でしょうか。
大変センシティブで深い内容ながら、さらさらと読めて、読後感はまったく重たくありません。
現実は厳しく、つらいこともたくさんあるけれど、泣いて笑って、あくまで爽やか。
あきらめないで、希望を捨てないで、生きていける、生きていこう。そんな風に背中をすこしおしてくれる、そんな本です。

この作品と、この作品を原作とした映画は、どちらも高く評価されました。
その社会に与えたインパクトは相当のものだったと思います。

こんな風に(↓)、耳目にふれる機会が増えたのも、この作品の影響では……と考えます。
「顔ニモマケズ、僕は生きる 内面好きと言ってくれた彼女」(朝日新聞デジタル)

新鮮で切実でひりひりするような作品は、確実に、子どもたちの心に響くはず。
そして、大人にも届きます。
優れた作品は、社会の変化を少し促すことができる、そんなYAの力を感じるこの頃です。

このときはたしか、学会の企画で森絵都さんのお話を聴く機会があり、『クラスメイツ』創作にまつわるエピソードなどもうかがいました。
お話の内容もとても興味深く、面白かったのですが、森絵都さんの人となり、たたずまい、丁寧に発せられる声や言葉にふれて、作品の背骨のようなものを感じられたことが印象的でした。




映画も原作をリスペクトした丁寧な作りで、素晴らしい作品でした。
パートごとにフォーカスする人物が移っていく構成が映画にも生きています。










PageTop