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サリーのこけももつみ Blueberries for Sal

まごうことなき傑作ですが、この本の真価は子どもに読み聞かせてこそ分かります。
……というか、私がそうでした。

子どもに本をよむとき、どんなことがおこってるのか……。
そんなことを書いたものが、パソコンの中を整理していたら出てきました。
おそらく、学内の図書館報に掲載いただいたものだと思います。2009年となっているので、今から9年も前ですね。

「サリーのこけももつみ」 ロバート・マックロスキー作 石井 桃子訳 岩波書店 1986年


~子どもと絵本を読むとき~

 車座になって、何かを待ち受けている、そんな子どもたちの中へ入っていくとき、心の中を不安が駆け抜けていく。
今日はどんな子どもたちだろう。子どもたちの様子は? この本、このプログラムでよかっただろうか……。
 絵本を取り出すと、子どもたちの視線がいっせいに絵本に注がれる。

 あるひ、サリーは おかあさんと こけももやまへ、こけももを つみにいきました。
 サリーは、ちいさな ぶりきの ばけつをもち、おかあさんは、おおきな ばけつを もっていきました。

ページを繰る音、ざわめき、しわぶき、こそこそしゃべる声……。
つつきあったり、顔を見合わせたりする子どもたち。
そんな子どもたちの反応に、手ごたえを探り、一つひとつ確かめながら、読み進めていく。

 サリーは、こけももを三つぶつんで、じぶんのちいさいばけつにいれました……ポリン・ポロン・ポルン!

ブリキに弾むこけももの音に、子どもたちの耳がいっせいにそばだつ。そして、

 それから、もう三つぶつむと、それはたべてしまいました。

そこかしこからもれる笑い声。幼いサリーへの共感が芽生え、子どもたちがぐっと絵本に引き込まれてゆく。

 それから、またいくつかつむと、ひとつをばけつにいれました――ポルン! 
 そして、あとのはたべてしまいました。
 そのあと、ばけつにはいっていた四つも、みなたべました。

 ポリン、ポロン・ポルン!と、繰り返される音が、耳をくすぐる。
緩急自在の語りに、そして、つんでは食べてしまうサリーの行為の繰り返しの丁寧な描写に、集中力が高まっていく。
空気がぴんとはりつめる。
子どもたち、一人ひとりが、物語の糸を支える網の目となり、紡ぎだされ、はり巡らされた糸が、そこに一回きりの美しい蜘蛛の巣を描きだす瞬間である。
 絵本の読み聞かせをしていれば、子どもとともに、一冊の絵本に、一瞬とも永遠とも知れぬ時を生きることは決して珍しいことではない。
数多の先達が、子どもとの忘れえぬ出会い、子どもと絵本との稀有な通い合い、子どもが絵本に与えてくれた深みや広がり、輝きについて、報告し、語ってきた。
そこには、絵本ならではの世界が、たしかに、開けていると感じられる。
 絵本をともに読むとき、わたしと、一人ひとりの子どもとの間にわたされる糸は、ふるえ、ひきあい、時にぴんとはりつめたり、ふっとゆるんだりしながら、微妙なバランスでそこに何かを描きだす。
子どもと、絵本と、わたし。息をのみ、息をつめ、そして、ほーっと息をはく……。
最後に、ふっと体がゆるんで、笑みが浮かぶとき、はり巡らされた糸は一瞬にして消え去ってしまうとしても、そこに描かれた何かは、共に、一つの世界を構築し、支えあい、くぐりぬけた、かけがえのない体験とともに、一人ひとりの記憶の奥深くにしまいこまれるのである。

読み聞かせの場面は、小学校1年生クラスでの「朝の読書」体験より。
引用は、ロバート・マックロスキー『サリーのこけももつみ』岩波書店(Blueberries For Sal. Robert McRCloskey. 1948)。

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